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ゲームセット その1 [高校野球]

 後日談、というか、

 今回のオチ。

 

 
 三男君、高校野球最後の夏の大会。

 初戦は同じ公立高校。実力的には、まぁウチの方がやや上か?いや、控えめに言っても、上だ、というチーム。

 練習試合をしたとすれば、3試合のうち2試合は必ず勝てるだろう?、という感じ。雰囲気わかるよね?

 必然的に出てくる言葉は、指導者からも保護者からもとりあえず「普通にやれば、勝てる」

というセリフである。

 ただし、この、「普通に」という形容詞が曲者なのである。

 いままで、「普通にやれば勝てる相手」に、普通にできなくて負けたことがいかにあることか。

 ところがここで「普通に」オーダーが組めない状況までもができてしまった。

 レギュラーメンバーにけが人が出てしまったのだ。

 しかも、入学以来、ほぼ(?)不動のトップバッターとして打順の中に君臨してきた選手である。

 そう、何を隠そう、わが息子の三男君なのであった……m(__)m

 なんてまぁ、ほぼ不動、なんて怪しげな表現があるのかどうかわからんが、とにかく、公式戦、練習試合を通してこの3年間、一番多くトップバッターでスタメン出場したのは間違いなくウチの息子なはずであるから、そう言ってもばちは当たるまい、て??

 次に多いのは、2番、もしかすると「4番」かもしれない、かな。1年秋の大会では我が県の甲子園常連強豪私立高校相手に4番ライトで出場し、ボーイズ時代にも対戦経験がある同年代の、のちのエースピッチャーのサウスポー君からライト線ツーベースをかっ飛ばし先制点のタイムリーヒットをかましている(結局、その先制点の1点だけでコールド負けだったけど…)。その後、後輩に、やはりボーイズ上がりで中2から4番を打っていたという、とんでもないスラッガー君が入部してくれたので、4番はその子が任され、ウチの三男君はまたトップバッターの席に戻らされた。

 親としちゃそりゃ1番、より4番に座ってくれた方がまぁ1番気持ちはいいのだが、わが三男、正直、「チャンス」に強い、と呼ばれるようなバッターの雰囲気は持ち合わせていない。

 がーっと勢いに乗ってドカンと一発かまして打者一巡のきっかけを作りだすバッターというイメージではなくて、どちらかといえばマイペースでコツコツとヒットを積み重ねていく、というタイプであるので、まぁ傍から見ればやはり先頭打者に据えたい、という雰囲気があるのでありましょう。とはいえ、高校入学から記憶する限り打率チームトップを維持してきた期間はおそらく一番長く、打点も常にトップクラスだったはずだ。

 監督さんからも、「一番いいバッターを僕は1番に据える」というような言葉を頂けているので、打力については認められていたのだと思うことにしている。

 なのに、ああそれなのにそれなのに。

 なんと大会直前の練習試合、前夜の雨にぬかるんだグラウンドでのアップ中に足を滑らせて捻挫してもうた。

 お、おまえ、…この大会が、アマチュアとしては野球人生の集大成だぞよ…

 野球、というスポーツにおいては、真剣に“競技”として挑む期間は、やはり高校野球の甲子園兆戦、というステージが幕引きでありましょう。その先の大学、社会人、というステージへと進む選手は、そのまた先にプロ野球、という「別天地」をあくまでも目指している方がほとんどだろう。

 つまりは、プロ野球など、野球で飯を食えるようになりたいと思う事が許されるレベルでない選手ならば、高校3年生の夏の全国高校野球選手権が間違いなく『グランドフィナーレ』なのだ。

 なのに、なぜにここで怪我をする?

 しかも、ウチの三男君、今年に入ってからの打撃はまさしく「絶好調」、オフシーズンに大幅な体重増とパワーアップを実現し、春の大会までの練習試合ではほとんどトップバッターで出場しながら、首位打者と打点王の2冠を達成していたのである。

 その後も県外遠征の練習試合で、生まれて初めての柵越えホームランをかっ飛ばし、そのパワーアップぶりをチームメイトや保護者達に強烈アピールしていたのだ。

 まぁ、この経緯はまた近いうち…い、いや、「そのうち」に、記事にしてみようと想う。

 それにしても、つらつらと思い返してみたら、そういえばウチの三男君、硬式を中学から始めて、病院に行くような怪我をした記憶が無い。

 怪我をしないように、あらゆるエクササイズを考えて自主トレをやらせていた成果だと自負していた、のだが、高校2年の秋から冬にかけて肉体大改造に挑み大幅な体重増を実現させていたことが足首、膝にはちとばかり負荷をかけ過ぎてしまっていたのかもしれない。

 焦ったが、本人ももっと焦っただろう。

 なにせ、インフルエンザや風邪は別として、守備練習のノックで打球を受けてベンチで湿布を張ってもらったり、真夏のランニングで脱水症状で日陰でおでこに濡れタオルをかけられた時以外、練習を休んだ経験が無かったのだ。

 左足のくるぶしのあたりが、右側のそれの倍くらいに腫れ上がっているようにはっきり見て取れるほどの重症である。

 びっこをひかないと歩けない。走るなぞ、論外である。

 まいった。

 怪我をしないトレーニング、はいくらでも思いつくのだが、怪我をした時の対処法は頭の中にインプットされていない。だって、怪我したことなかったから。

 大会は、1週間後である…

 なんでまた神よ、最後の最後でこんな試練を与え給うのか。 

 ピンチもピンチ、大ピンチ。「絶体絶命」という言葉が頭に瞬間浮かんだが、その次の瞬間には、「さてこれをどう対処しよう、乗り越えていこう?」と考えることにした。

 つーか、そうするしかないじゃん。人生なんて、うまくいかないもので、そこをなんとかうまく回そうと努力し続けるのが、まぁ“常人”の生き方であるのだ。うむ。

 とにもかくにも小学校2年生から始めた野球、ほぼ11年間積み上げてきたものをここで披露しないでどうするんじゃ~っ!!!

 足痛いから試合出ない、なんて言える状況ではないんだぞよ。

 と、言うことで、とにかく捻挫の痛みをとる方法を、ネットであさりまくって、アイシングから完全足首固定から、家でできることはありとあらゆることをやり、放課後は整骨院通いを続けた。しかも、評判の良いところを知人に聞きまくって3ヶ所かけもちである。

 いやはや、まいったもんだが、どうしても1回戦には間に合わず、ここはチームメイトになんとか頑張ってもらって、2回戦までつないでもらい、本人は次の試合のために我慢のベンチスタートになってしまった。

 初戦はたまたま地元テレビ局の放送球場での試合だったため、中継のアナウンサーにウチの息子が怪我のため出場できないような話までわざわざ紹介されてしまい、その後知人に会うたびに「どうしたどうした」と質問されてしまってちとまいった。

 結果的にはコールド勝ちで、なんとかまだユニフォームを着て試合ができる望みをつないでくれたチームメイトには感謝感謝、である。ほんま、感謝しかないのである。

 ところが2回戦の相手は、3年連続でわが県の夏の大会“準”優勝チームときたものだ。毎年決勝で甲子園常連強豪私立お化け高校に負けてしまって涙を呑んでいる、それでも部員数99名の、これまたうちにとってはやはり“超”強豪私立校なのでありました…(T_T)つまり、次の試合は、その甲子園常連強豪私立お化け高校が無ければ、もしかして3年連続で甲子園に出場していたかもしれない高校と戦わなければならない、というわけなのである。

 それでも春の県大会では、公立高校にコロッと負けてしまったこともあるので、愚かな保護者どもは「もしかして、もしかして??」なんて昭和歌謡の歌詞のような淡い期待を抱いてしまうのである。

 しかし、県大会どまりの大会と、甲子園がかかった大会では気合ののりが全く違う。

 彼らにとっても、3年生には最後の夏だ。しかも3年連続で準優勝、なんて、選手たちには残念でこそあれうれしくもなんともない称号を返上しようと意気込んでいるだろう。ここはどんな相手だろうとなんとしても勝ちに来る。

 毎晩整骨院通っても、まだまだきつい痛みがあるらしいが、とにかくこちらも最後なのだ。「大丈夫か?」なんて尋ねてもしょうがないので、ただただ「頑張れ」と送りだしてやるしかない。

 最後の夏の大会。スターティングメンバーに入れていただいた打順は、座りなれた「1番」である。ここは、痛みこらえて必死こいてやれば、公式戦のプレッシャーも感じずにやれるんじゃないかとの淡い期待も見事に裏切られ、1打席目はなんと見送りの三球三振…

 た、頼むよ、お前。

 トップバッターがバット振らなきゃ、何も起こらんだろうが!

 2打席目も塁に確かランナーがいたはずだが(去年のことなので詳しく覚えていない…)、空振り三振…、2打席連続三振である。

 あー、あいつ、テンパってるなぁー。怪我をしてからバット握ったのは試合の3日前、しかもボールをまともにしっかりと打ったのは前日練習だけ、ではさすがに準備不足はいたしかたないのだが、これが最後の試合、足の痛みもくそもないんだから、とにかくフルスイングするしかねーだろ!とスタンドでいくら心の中で叫んでみても、この声は届かない。

 学童時代、同じ地区で戦ってきたチームに所属し、連合チームでは一緒に試合に臨んだこともあるチームメートのエース君が、強豪私立高校相手に一歩も引かない気合のピッチングでなんと0対0のまま、5回に突入。その回の三打席目もランナーを三塁においてのチャンスでウチの三男君に打順が回ってきた!

 初戦を突破してくれた仲間たちに報いるのはこれが最後かもしれんのだ、なんとかせい~!デッドボールでも何でもいいから、せめて次につなげ~!と、心の中で祈る父。

 しかし、今日は打てないと見たのか、監督からはスクイズのサイン。そら、そうだよな…

 だ、だが、バントならば、ボーイズ時代は「バント職人」の異名を一瞬でも受けたことのある三男、よし、ここで先取点~~と思ったら打ち上げやがった!

 ぼけ、カス、死ね~!!という、ありとあらゆる罵詈雑言が瞬時に脳内を駆け巡る。

 

 打球は三塁方向へのほわーんとした、いわゆるポップフライ?

 

 スタンド応援団が凍り付く。

 

 当然私のハートはストップモーション

 

 

  …、あれ、このフレーズは以前にも使用したような…?

 

 

 ところがここで“奇跡”がおこる。

 

 

 


 

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