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最後の夏、始まりのデッドボール [高校野球]

 三年生の“最後の夏”が、終わった。

 2年と約4ヶ月ぐらい、まさしく、あっという間の高校野球だっただろう。
 

 先日、ウチの三男の公式戦“初陣”でもある、同時に3年生にとっては最後の夏の大会が行われた。

 おそらくそれほどできないであろう、数少ない(?)公式戦の舞台、甲子園を狙う、上位進出高校よりも、その一戦一戦、一打席、その“一球”は、まさしく貴重。

 しかも、1年生ながら、センターを任され、トップバッターとしての先発出場だ。

 頼むからチームの足を引っ張らないように、エラーしませんように、せめて一本ぐらいはヒット打ってくれよなぁー、という親心は置いといて。

 公式戦の雰囲気を、よおぉ~く味わって、プレイしてもらいたい

 …ものだと思っていたら、先頭打者の息子、いきなりデッドボールを食らってしまった…(*_*;

 そして、実はこの一球で、ウチの三男君の今日の試合は終わっていたらしい。

 肘に食らったのだが、エルボーガードに当たってくれたのが不幸中の幸いであった。でなければ、即、退場にでもなりかねないほどの衝撃だったようだ。

 うちに帰ってきてからみたら、そのエルボーガードの跡くっきりとついて内出血のあざができているほどであった。ので、その後の打席、なんかキレがないなぁ、緊張してんのかなぁ、とイライラしてみていたのだが、実はイニングの合間のキャッチボールでも痛みを感じるほど、右ひじ(というかそのちょっと上ぐらいの上腕の筋肉)が気になっていたらしい。…はぁ…

 こういうのも、野球なのだなぁ(ちなみに感覚が無くなるほどのアイシングと、滴り落ちるほど塗ったバンテリンで、二日後にはほとんど痛みは無くなったようだけど)。

 ウチの三男君は右投げ左打ち、ちょうど野球を始めた学童野球の頃、メジャーにわたったイチロー選手が大活躍、んで、お兄ちゃんと一緒に左打ちにスイッチしたのである。

 ただ、考えてみると、バッティングの時は、スローで使う「利き腕」がピッチャー寄りになるので、怖いのはデッドボールだ。特にピッチャーが利き腕に食らってしまうと、肩でも肘でも上腕あたりでも、骨に影響はなくともあざができるほどのボールが当たればその衝撃は半端なく、その日一日の試合には大なり小なり間違いなく影響がでるのは想像に難くない。

 そう考えると、二刀流日ハムの大谷君も右投げ左打ちだが、実はピッチャーを志す選手は、投げるのと打つのは同じ側にしていた方が比較的安全なのかもしれない。まぁ、右打ちでも右ひじにデッドボールを食らうときもあるし、肘の内側に食らうのはとても危険らしいので、どっちにしろデッドボールは受けない方が良いのだが、デッドボールってやつは、自分にも相手にも、個人にもチームにもなにかと影響を及ぼす可能性が高い。

 デッドボールについての考察は後でゆっくり考えるとして、とにかくこの試合、まさしく「死闘」「激戦」という表現がぴったりくる試合展開、シーソーゲームのお手本、と表現しても良いかなと思える“ゲーム”であった。



 

 初回、先頭バッターのウチの三男君、いきなりのデッドボールで出塁、次打者が送りバントを失敗しワンアウト、少しつまづきかけた雰囲気を、ウチの三男、果敢に盗塁を決めてミスを帳消しにする。

 続くキャプテン君がしっかりとレフト前ヒットを放ち、1,3塁、ここで4番の、三男と同じ中学出身の先輩が尻餅をつきながらもがむしゃらにスクイズを決め、ウチの三男君、先取点のホームを踏むのであります。

 幸先よし!と思ったのもつかの間、初回の裏にすぐ逆転を許し、1-2のスコアにされてしまう。

 こうなると、先取点をとった喜びも、かえって強い不安に置き換えられてしまう。点を取った後にすぐ逆転されるというのは明らかに相手側に“流れ”がいくのは間違いない。

 案の定、その後ズルズルと得点を重ねられ、3回と4回に1点ずつ、で、6回終了時点で1-4である。

 なんとなく、あぁ、やはりこうなるか…的な空気がスタンドの保護者の間にも漂い始めたころ、なんと7回表の攻撃で2点を奪取し、3-4の1点差まで迫るのである!

 これにはスタンドも再度燃え上がり応援もヒートアップ。

 しかし、またまたなんと得点した裏の相手の攻撃で失点してしまう。で、3-5、と、再び突き放され始める。

 今日の試合は、このパターンがおそらく一番まずかったろう。

 流れをつかんだと想ったらまた相手に向かってしまう。こういうゲームは、メンタル的に盛り上がろうとしてもなかなか厳しい…。

 初回なり、7回なり、ウチの表の攻撃で得点した回の裏、どちらかでも0点に抑えていれば、もしくは、相手が点を取った直後にこちらが得点する、という回が一度でもあれば、選手たちももっとイケイケになれたではなかろうか。

 そうすれば、延長になる前にこちらに勝利の女神は微笑んでくれていたような気がする。

 たられば、なのは重々承知の上の“ぼやき”なので、ご了承くださいな^^;

 「ピンチの後にチャンスあり」、とはよく言ったもので、つまり、「チャンスの後にはピンチがくる」のである。

 そこでこらえられるかどうかが、勝敗を決める重要な要素になるのでしょうなぁ。

 “運”もあるけどね。

 こういう所を、チームメンバー全員が意識を共有し、守りでも“攻める”姿勢になって、なんとしてもこの回だけは必ず0点に抑える!という気持ちを全員で高めて失点を許さない、ように持っていく“雰囲気作り”が、もしかすると監督さんの腕の見せ所なのかもしれない。

 最初から最後まで気を張り詰め続けられれば良いが、そこは人間である。暑さもあればつい気持ちも体もだるくなる瞬間はあるだろう。

 いつもいつも気を張り続けているんじゃなくて、「ここぞ!」というときにボルテージを上げてチーム一丸となって守る、もしくは攻める、という、ムードの盛り上げ方って大事なんだろうなぁ、なんて試合を見ながら考えてしまった。

 みな、まじめな子が多いので、ランナーを出してしまうと、どうしても必要以上に固くなりすぎているように見受けられた。

 とにかく、試合は3-5のまま、ついに最終回を迎えてしまう。打順は6番から、トップバッターの三男君に回るには最低でも2人は出塁してもらわなければならない。

 脳細胞の中の妄想劇場では、2アウト乍らランナーが二人出て、2アウト2,3塁、そこでウチの息子が外野の間を抜く走者一掃の2ベースヒットを放ち同点!そして打線に火が付き一気に逆転~ もしくは逆転ホームランなんか打っちゃったりして??…

 …な~んてシーンがムラムラと湧き上がっては消えていた……

 …と、想ったらほんとーにウチの息子に打順が回ってきてしまった!!

 2アウトから、フォアボールとヒットでつないだのだ。

 なななな~んと、9回表の攻撃、3-5と2点ビハインドの試合状況、2アウトでランナーは1,2塁!で、ウチの三男だ……^^;

 初回のデッドボールで腰の引けている三男君、送りバントを決めた以外はここまですべて内野ゴロでノーヒットだし…

 ここで凡退したら当然最後のバッター、ということになってしまうじゃないか!

 さっきの妄想劇場はどこへやら、もう一回デッドボールでいいから(笑)とにかく塁に出てくりぃ~っと、バックネット裏でビデオ撮影していた私、もう撮影どころではなく本当に手を合わせて祈ってしまった。

 後で聞いたら、「もう痛いとかなんとか考える余裕なくて、とにかく思いっきり振った」という打球は、速いゴロながら、セカンド正面~~~っ 万事休す!!と、一瞬、呼吸も止まり、全てがスローモーションな世界にワープしてしまったが、なんとセカンドが大きく後ろにはじいてくれた!後でビデオ見ようと想ったらば、その時グラウンドに視線が釘づけになっていなのか肝心なところが映っていなかった。急にカメラを動かしてしまったので、ライトが捕球している画面になり、みようによってはライト前ヒットを打ったように見えた…^^; デモエラーデシタ…ダテンモツキマセン…

 で、セカンドランナーが一気にホームに帰り得点、これで4-5の1点差!!!!し、痺れるぅ~

 気づいたら胸の谷間と背骨にそって大量の冷汗がダラダラダラと流れておりましたがな…

 ウチの三男、今日はノーヒット乍ら、初回デッドボールから先制点のホーム、最終回2アウトからエラーで出塁で得点と、チーム6得点のうち2点にはなんとかからんだので、これで勝ってればなんか「持ってる男」と言ってもらえそうだったのになぁ…

 2アウトながらランナーは1、2塁、相手ピッチャー君少し気持ちが切れたのか、次の打者をこれまたデッドボールで歩かせてしまい、なんと満塁で、3番のキャプテン君の打順である。

 いや~、ドラマですなぁ。最終回、1点差、2アウト満塁、そこでキャプテン登場だよ!

 カウントはフルカウント、次の一球は、アウトコースにやや大きく外れて押し出し~っ!!!

 同点!

 9回土壇場で同点に追いついたのであるっ!

 スタンドは狂喜乱舞、こういう時のピッチャーは、相手チーム乍ら本当に気の毒になってしまう。

 ピッチャーというポジションは、全くメンタル的にタフじゃないとやっていられないよなぁ。

 しかし、その回のウチの追撃もここまで、9回の裏は途中から登板しているこれも三男と同級生の1年ピッチャー君が危なげなく抑え、この大会初めての延長戦に突入したわけであります。

 いや~、学童からずっと次男と三男の試合を見てきたが、ここまでハラハラドキドキの試合展開は初めてである。まぁ、学童でもボーイズでも、けっこう逆転また逆転、なんて試合は確かにあったけど、やはり、「高校野球」の舞台は、スタンド全体の、ボルテージの上がり方が全く違う。しかもたまたま監督同士が「親子」対決、と試合前からメディア的にも話題性があったせいか、バックネット裏には、チーム関係者以外の観客もけっこういたのだ。

 その観客の方々が、敵味方関係なく良いプレイに拍手と声援を送ってくれる。なんというか、この球場全体でこの試合を盛り上げていくれているような、こういう雰囲気は「高校野球」という世界ならではの現象なのかもしれない、と、しみじみ感じてしまった。

 そして延長10回の表、1点を奪取しなんと逆転に成功する!

 裏の攻撃をしのげば勝利、初戦突破!なのに勝利の女神は未だどちらに微笑むか迷っていらっしゃる。

 その裏に1点を返され、またまた同点~っ。

 さらに延長。

 こんなことが、やはりあるのだ、野球というスポーツは。

 まさしく「筋書きのないドラマ」である。しかし、心臓に悪い。

 11回表、1死満塁まで攻めたてるがおしくも無得点、そして、11回裏の守り、1アウトだが3塁までランナーを進められ、満塁策をとりまた再度3年生エース君を登板させる。

 ワンアウト満塁、バッターに投げた渾身のストレート。しかし、バッターもフルスイング!!弾き返された打球は無情にもライトオーバー。

 ゲームセット

 ようやく、3時間にわたる死闘にピリオドが打たれる。

 三年生の、夏、「高校野球」が終わった。

 静まり返る応援スタンド、対照的に沸き返る相手チーム応援団、バックネット裏にいるとそのコントラストが劇的に印象に残る。

 挨拶を終え、片づけにかかるベンチにカメラを向けると、これも最後の夏、3年女子マネージャーさんの泣きじゃくる顔に、つい目頭が熱くなってしまいますな。うん…

 最後の最後に、すごい試合ができた。これは良いことなんだろうが、だからこそ、勝たしてやりたかったなぁ。

 が、相手チームの三年生にとっても、同じく最後の夏、少しでも長くユニフォームを着て試合がしたいのはどちらも同じ、その気持ちの強い方が生き残る

 勝負というものは、まぁ、残酷なものではある。

 しかし、本当に残念だ。負けてさわやか、なんていうのは、負け惜しみだよ。まったく。

 なんにせよ、これ以上はないでしょ、というくらい、ハラハラドキドキの試合を魅せてもらった。

 「口惜しさ」をトッピングされた「思い出」ではあるが、おそらくこれからの三男との会話の中に、死ぬまでトピックとして出てくるだろうと確信できるほどのインパクト(感動)を与えてくれたことに、本当に感謝したい。

 とにかく、グラウンドで土埃まみれになって一生懸命戦った選手たちに心から拍手を送りたい。よう頑張った頑張った。

 次のステージでも、また、それぞれが、それぞれの場所で、このようなヒリヒリとした「勝負」ができるよう願う。

 そして、この試合の“口惜しさ”をバネに、粘りに粘って粘りまくって、こんどこそはその「勝負」に勝ってもらいたいものである。

 勝っても負けても、人生は、勝手に進んでしまうもんだからねぇ。

 どうせなら、勝ったり負けたり、起伏の激しい人生の方が、「思い出」はたくさん残るのかもしれないしなぁ。

 梅雨も明けた。

 甲子園出場校も決まり、それ以外の高校の、“すべての三年生球児の夏”が、終わった。

 そして、多くの先輩達のたくさんの汗が沁み込んだ、青い空が広がる高校のグラウンドには、白い雲の間から明るい日差しが降り注ぎ、何事もなかったように、風が吹いているのでしょう。



 新しいチームのメンバー達の掛け声と、新しい“感動”を、待ちわびるように…


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