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コントロール [投球論]

 ピッチャーにとって、“最も”大事な能力は何であるか、“一つだけ”あげてくれ、といわれたら、私は間違いなく

 『コントロール』

 である、と即答するだろう。

 時速160kmのストレートを投げられても、ストライクをとることができなければ使い物にならない、というような表現を、元楽天監督の野村克也氏がおっしゃっていたが、そのとおりだろう。

 ピッチャーのコントロール。いかにストライクを取るか、という能力だけの様に思われがちだが、ピッチャーにとって、本当にコントロールしなければならないのは、きっと「感情」であるはずだ。

 練習では、いくらアウトローのストレートでずばずばとストライクを取れたとしても、実戦で、フルベースのフルカウントの時、同じようにアウトローにズバッとストレートを投げ込めなければ、これまた「ノーコン」と呼ばれる投手と何ら変わりがないからだ。

 この場合、勝負を分けるのは、メンタルである。

 その訳は…

 

 

 とはいえ、じゃぁ、メンタルトレーニングだけ積めばコントロールが良くなるかと言えば、絶対そんな事は無い。この場合は、「メンタル」というより、「運動系の神経力」、と表現した方が近かろう、か?

 運動神経を発達させるためには、身体を動かさねばならない、つまり、「運動」しなければいけない。

 全く同じことで、ピッチャーがコントロールを良くしようと想えば、座っているキャッチャーにボールを投げてみなければ良いか悪いかもわからず、改善しようがない。

 結局、肩は消耗品、肘が心配だとなんだかんだ気を揉んでみたって、ピッチャーがフォアボールを減らしたい、と想うならば、“ストライクを獲るためのコントロール”を身につけるため、ブルペンで何千球、何万球と投げ込まなければいけないのは当然なのである。

 誰にでも良く効く、「魔法の薬」、それは、おそらく、【特訓】という名のお薬である。ただし、“すぐに”良く効く、かどうかは、個人の素質による。

 冒頭での話は、せっかくつけたコントロールを、実戦でも充分に発揮できるようにするために、「感情のコントロール」もできないといけません、という意味である。

 大前提として、しっかりとしたコントロールが身に付いていないというのであれば、メンタル・トレーニング、メンタル強化云々のテーマも、無意味で不毛な議論になり下がる。

 それでは、どうやってコントロールを身につけるのか。

 これはもう、『投げ込む』しか、ない。

 【投げ込み】の功罪については拙記「投げ込みは是か非か?」をお読みいただくとして、息子が所属する学童野球部のコーチをしていたころ、私は、息子に対して、1試合当たりのフォアボールを1個減らしたかったら、1万球、投げ込め!なんて言って投球練習をさせたもんだが、1万球投げ込もうとしたら、1日100球投げ込んで100日間。実際、毎日100球なんて無理だから、まぁ、3日に1回とすれば、約1年間で1試合当たりのフォアボール数を平均1個減らせるぞ、つまり、一日練習サボるとそのぶん、コントロールが良くなるのが先になってしまうぞ、だから毎日少しずつコツコツピッチング練習しておかないといけないんだぞ、な~んて補足説明を付け加えて納得させたものだ。

 これは、バッティングにおいては、「打率を“一厘”あげたかったら、素振りを1,000回しろ!」と、まことしやかに力説される指導者の方々の口癖と同じように、「説教ことわざ」、みたいなもんで、実際1万球投げ込んだから絶対コントロールが良くなる、なんて事は保証でき無い訳だし、1試合当たり10個もフォアボールを出してしまうピッチャーが「9個」に減らすのと1試合当たり3個しか出さないピッチャーが「2個」に減らす、のは、同じ1個は1個でも、メジャーリーグのワールドシリーズと日本プロ野球の二軍の試合ぐらいに“レベル”の違う話。倍の努力どころか、数10倍の努力を強いられるだろう。

 しかし、コントロールを良くしてくれる“魔法の薬”は「投げ込み」という【特訓】だ、とはいえ、“薬”は、身体にとっては“毒”でもあるのだ。

 コントロールを良くしようと投げ込んで投げ込んで、コントロールが良くなる前に肘や肩を痛めてしまったら元も子もない。

 「投球練習」をしなければ、「コントロール」はつかないが、だからといって、毎日毎日200球も投げ込み続けたら、ほとんどの選手が1年と持たずに故障するだろう。

 これが、世界中の、チームのエースを目指すピッチャー、もしくは、勝利を目指す監督やコーチといった指導者の最大のジレンマ、であるはずだ。

 ではどうするかというと、私の今現在での結論は、「神経系」のトレーニングを並行して施していくべきだろう、というモノだ。

 “最低限の投球練習数”で、「コントロールを良く」し、フォアボールを減らすという“最高の効果”を出す。肝臓には“毒”でしかない“薬”は、必要最低限で済ませたいもの。

 その為に必要だと想われる神経系のトレーニングは、やはり、「コーディネーショントレーニング」でありましょう(拙記「コーディネーション能力」参照)。

 馬鹿のひとつ覚えの様に、私はコーディネーション、コーディネーションと叫び続けるわけですが、無意味な“投げ込み”で子供が肘を疲労骨折してしまう様な指導をしてしまわないように、毎日30球の投げ込みでも1試合平均1個のフォアボール数に抑えられるコントロールが身に付けられるような「工夫」をすべきである。

 ウチの次男は中学野球部においてエースナンバーを背負っていたわけであるが、統計をとるとフォアボール数は1試合平均1個ほどだったという。三男も学童野球でショート兼ピッチャーをやらせ、最後の夏はほとんどエースを任せていたのであるが、やはり、1試合(7イニングス)の平均フォアボール数は1.5個を越えた事は無い。

 この“コントロール”は、いかにして身に付いたのか。

 最初の最初、「コントロールを良くしようとして具体的に取り組んだ練習」は、片足立ちのバランストレーニングであった。これは、ピッチャーが振りかぶって、脚を上げたフォーム(右投げなら、左足の膝が一番高くなったところで止めたような姿)で、動きを止めさせて、そのままの姿勢でじーっと我慢させるのである。

 就寝前、風呂上がりに必ず毎晩それで何秒こらえられるか、ウチの次男にストップウォッチ片手にやらせ続けてきたのであるが、最終的にはおよそ平均3分半前後はできるようになっていた。

 手塚一志氏も、「根はり」という表現で、軸足の重要性を訴えていらっしゃったが、ピッチングのスタートは軸足での1本立ちになるわけだから、当然、ここでグラグラしていたら自分が投げたいところにボールを運べるはずもないだろう、という考えでした。

 軸足のバランス保持筋鍛錬の後は、着足のバランスを徹底的に鍛えた。

 これは、ピッチャーがリリースした後の、着足(右投げなら、左脚)一本で身体を支えている様なフォームを作り、着足のつま先あたりに置いたボールを拾い上げて上体を起こし、またつま先に置いて、そしてまた拾い上げ…という動作を、片足のまま繰り返させるのである。

 これも、寝る前トレーニングとして、毎晩何回できるか、と記録に挑戦させていた。

 着足の重要性は、東北楽天ゴールデンイーグルスの佐藤投手コーチも力説されていたが、ボールリリースする前に、しっかりと投球方向へ着足を接地させていわゆる“軸”を安定させてから腕を振り始めるわけだから、ここがぐらついてしまうと発射されたボールも当然軌道がぶれるだろう。

 右バッターのインコースを狙っても、投球角度が「一度」変わっただけでホームベース一枚分もコースがずれてしまうのである。

 ので、軸足が安定したら、次は着足、つーととにかく、足腰の安定、というものは、「良いコントロール」と呼ばれる投手の基本中の基本能力でありましょう。

 バランスボードを使用させたりもしたが、これはちと負荷が強すぎたみたいで、軸足のバランス練習の時はまだ良かったが、着足鍛錬の球拾い系ではとても動作が続けられなかった。ので、その場合は普通の床上で充分ではなかろうか。ただ最終的に、バランスボードなど、非常に不安定な床の上でやらせた方がより実戦的であるとは想います。高校野球など、レベルが上になったら挑戦させようと想っている。

 この二つのトレーニングで、息子達の「コントロール」はかなり向上したと想われる。その“効果”は、フォアボールを1試合で6個以上出してしまう程度のコントロールを、1試合で平均5個程度に減らすモノであったかなぁ、と、“指導後実感”として持っている。

 本当は、「背番号1をつける方法」というDVDの中で紹介されていた練習方法の様に

背番号1をつける方法(DVD)

背番号1をつける方法(DVD)

  • 作者: 川村 卓(筑波大学大学院 人間総合科学研究科講師、筑波大学硬式野球部監督)
  • 出版社/メーカー: ジースポート
  • 発売日: 2006/04/01
  • メディア: DVD-ROM

 

 トランポリンでも購入して、そのトランポリンの上でジャンプルする様なトレーニングをやらせたかったのであるが、とても屋内に置く場所が無かったのであきらめた^^; 外で使うと、すぐに傷むような気もして…(ちなみに、このヴィデオは、様々に工夫を凝らした練習方法がこれでもかこれでもかと紹介されていたのですが、その全てが非常に効果的なものでありました。絶対に、購入して損はしないと想います(^O^)/)

 コーディネーション能力云々言う前に、とにかく「動きの中でも良い姿勢(フォーム)を保つための足腰の筋力」、私は、「バランス保持筋」と呼んでいるのであるが、それを鍛えなければならない。もちろん、コーディネーション能力の中でも「バランス能力」は重要視されているわけでありますが、バランス能力向上トレーニングは、コーディネーショントレーニングの一環として、というよりも、ひとつの“ジャンル”として取り組むべきメソッドであると信じている。

 というのは、1週間に1イニングしか毎度投げない、というのならば問題ないかもしれませんが、1試合、9イニングス投げ切りたい、真夏の炎天下で投げなければいけない、毎日連戦連戦で登板しなければいけない、となると、そのバランス保持筋のスタミナというか、“筋持久力”の有る無しは、非常に大きな問題になってくるはずであると想うからだ。

 だから、その為の運動は、ウェイトトレーニング同様、継続して鍛え続けなければいけないと想っている。

 そして、1試合平均5個のフォアボール数を、更にもっともっと減らすためにどうするかとなると、私は「コーディネーショントレーニング」がこのレベルから非常に有効だったのではなかったろうか、と“信じて”いるわけなのである。

 コーディネーション能力とはなんぞや、という事に関しては、拙記「コーディネーション能力」をそれこそ読んでいただきたいのであるが、数あるコーディネーション能力の中で、“コントロール”にダイレクトに影響する能力としては、まず、定位能力、そして、識別能力というものがあると感じている(詳しく知りたい方は、このDVDが秀逸)

コーディネーショントレーニング PART1 小学生編[DVD

コーディネーショントレーニング PART1 小学生編[DVD

  • 作者: 東根 明人
  • 出版社/メーカー: 明治図書出版
  • 発売日: 2006/12/01
  • メディア: DVD-ROM

 定位能力とは何か、というと、『相手やボールなど、動いているものと自分との位置関係を正確に把握する能力』で、ボールゲームにはかかせない、という。

 識別能力、とは、『手や足、用具などを精密に操作する能力』で、ボールやラケット、自転車のハンドル操作等が代表例だそうです。

 その他のコーディネーション能力には、「バランス能力」というものもあるわけですが、これはすでに論じたので割愛いたします。

 定位能力は、どちらかといえば、サッカーやバスケットボールののように、動きながらボールを支配したいというスポーツ、野球であれば守備の動き、に大事な能力の様に感じるが、ピッチャーも、激しく頭部を移動させながら、18.44m先の、ホームベース幅の、高低およそ60cmから70cm(そんなに無いか?)の的に向かって、ボール1個分の出し入れと緩急、変化球の曲がり具合までを正確に意識しつつ投げ分けなければいけないわけだから、「ボール位置の空間認知度」は非常に高度な感覚を求められているはずだ。

 識別能力、は、もう当然そのまま必要なモノでピッチングには重要だと想うが、野球というスポーツにおいては、私はどちらかというと、ピッチングよりもバッティングにおいて、より重要な能力でもあろうと想っている。

 とにかく、フォアボール数を、1試合当たり平均5個から3個に減らすために、この「コーディネーション能力」というものは大事だったのではないかと考えております。

 これを鍛えるには、という話になるとまたまたとんでもない文量になりそうなので、またそのうちひとつの記事にまとめてみたいと想っている。

 では、1試合当たり平均3個のフォアボール数を、“1個以内”に減らすためにはどうするか。

 そこまでにコントロールを良くするための、決定的な要因は、私は「肩のインナーマッスル」なのではなかろうか、と想っている。ただ、もしかすると、コーディネーショントレーニングよりもこちらの方が先に重要で、原点となる“ベース”として、コーディネーショントレーニングによる、運動神経系の発達があったのかもしれない。が、まぁ、そんなこたぁどうでも良いわな。それこそ、「ニワトリが先か、卵が先か」の話になってしまう。

 肩のインナーマッスルというと、野球肩・肘の故障予防、という観点から鍛えなさい、という話が多いと想うが、私は、コントロールにも大いに影響しているはずだと信じている。

 拙記「ミズノ エアーフリッパー」の中でも述べたのだが、沢山ある肩関節周りのインナーマッスルの中で、特にコントロールを良くするために必要なのが、肩甲下筋であると想います。

 インナーマッスルがコントロールに影響してくる、という事も、書き始めるととんでもない分量になりそうなので、これはまたそのうち、別の記事で考えていきたいと想っております。

 しかし、フィジカル的な問題点よりなにより、「コントロールを良くする練習」をするためのメンタル、という事も非常に大事になるはずだ、なんていうと、話が元に戻って禅問答じみてきたが、どういうことかというと、意識として「絶対に、コントロールを良くするぞ!」という、断固たる決意を持って投球練習を始めないと、同じ100球のピッチング練習をしても、ただだらだら命令されたからやってる、みたいな態度でやってたら、その効果には雲泥の差がついてくるはずだ。

 一般の人も、ある意味、メンタルコントロールができれば、万病のもとである食べ過ぎによる肥満からも解放され、先天性の持病さえなければ、幸せな天寿を全うできるのかもしれません。

 そして、野球のピッチャーにおいては、コントロールを良くするためのありとあらゆるトレーニングをこなしてみて、最後の最後の仕上げとして、どのような状況にも動じない「メンタル・コントロール」ができた時に、「無四球完投勝利」という、打たせて獲るコントロールピッチャーにとっては“最高の栄誉”を得ることができるのではないでしょうか。

 球速が遅くて悩んでいるピッチャー諸君、三振が取れなくても全然問題はありません。かえって、いくらストレートのスピードがあろうとも、三振か、フォアボールか、なんてピッチャーほど、野手が守りのリズムを取りにくい試合はないはず。

 低めいっぱいのコントロールで、アウトの半分以上が内野ゴロで獲れるように頑張ろう! その方が、守備もリズムができて、きっと野手陣のバッティングにも良い影響が生まれるはずであると、7年間の学童野球指導経験上、それは“確信に近い”モノがありますぞ(^O^)/

 …とはいえ、内野がぽろぽろエラーしまくりレベルだと、お話になんない、けど…。


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