驚異のシンクロ打法? [バッティング関連本]
投球障害の対応策探求から、たどり着いた手塚一志氏であるが(「ミズノ エアーフリッパー」「ショルダーズ・バイブル」参照)、この方、野球界のカリスマトレーナーとして有名な方で、そのピッチング理論、バッティング理論の方に熱狂的な信奉者が多いらしい。
ところで、実は私も「“一部”熱狂的な信者」の1人なのでありました。
どうして“一部”かと言うと、中には私の脳細胞では「理解不能」なテクニックも多々紹介されているからだ。うねり打法とか、ジャイロボールだとか……f(-_-;)
私は、自分の脳みその中に「スルリ」んと入ってこない理屈は、指導の中に採用しないことにしている。
わかったつもりで指導法の中に取り入れて、実は全く正反対のことをやらせていた、なんてことは良くある話。
自分で消化できない指導方法は、絶対、知ったかぶりでコーチングしない方が良い。かならず、どこかでぼろが出る。
結果もついてこないはずだ。
本当に身につけたいなら、実際、上達屋の講習でも受ければ良いのでしょうが、講習費、高くてなぁ…(>_<)
そこまで「キチガイ」にはなれません。先立つものが乏しくて…トホホ。
しかし、自分で納得できた方法は、指導にも自信が持て、指導を受ける側の成績もあきらかに向上してくる事がある。
私が、バッティング指導の中で最大の効果が得られたと思うテクニックが、手塚一志氏が提唱する「シンクロ打法」というものだ。
バッティングが変わる!驚異のシンクロ打法―発見!タイミングの法則
- 作者: 手塚 一志
- 出版社/メーカー: 日本文芸社
- 発売日: 2000/07
- メディア: 単行本
このテクニックを子供達に実践させてみたら、明らかに打率が良くなった選手が出てきたのである。
その訳は…?
やり方はいたって簡単、ピッチャーが投げるモーションに入って、振りかぶって足を上げて、その後重心を落としてくるわけだが、ピッチャーの重心が最高点になり、下がり始めるタイミングに合わせて、バッターが前足の踵を「クン!」と踏んでやる、というものである。
…
…だから?
どうしたんだよ!? という声が聞こえてきそうであるが、おどろくなかれ、この動作をバッティングモーションの中に取り入れるだけで、これまた本当にミートのタイミングを合わせやすくなるのである。
打率の低い子の特徴として、私は、「準備の悪さ」があると思っている。
どういう事かと言うと、ボールがくるまでなんの動作もせず、来た時に「びっくりした」ようにバットを振り始めている子が、ヒットを打てない選手の中に多い気がするのだ。
シンクロ打法とはつまり、“打つための準備を最適なタイミングで始める方法”、だと思っている。選手によっては、かなり前から軸足に体重を掛け切ってボールを待っている打者もいるが、そうすると身体が固まってしまい、いざボールが来た時にスムーズに始動できない、という感じがする。また、余程軸足を鍛え抜かないと、いろいろなタイミングで投げてくるピッチャーのモーションに合わせて待っていられないだろう。
王貞治氏の現役時代並に、毎晩3時間も試合後に練習する覚悟が無ければ「一本足打法」というバッティングスタイルは実用できないのだろう。
振り遅れは論外だけれども、だからといって早く振り始めれば良いものでもない。
バッティング、とは、タイミング、なのだ。絶対。
いくら150メートルの場外ホームランをかっ飛ばすほどのスイングスピードの持ち主でも、バットにボールが当たらなければ、まさしく“宝の持ち腐れ”である。
ボールが来た時ビックリして振り始めれば、もちろん振り遅れやすく詰まらせられるような事もあるが、始動が早すぎても、いわゆる“タメ”のないスイングとなり、突っ込みやすく、力の入らないポイントでミートせざるを得なくなる。当然、強い打球は打てず、ボテボテゴロのオンパレードであろう。
塁間距離の短い学童ならまだしも、塁間が大人と同じになる中学野球以上のレベルでは、しっかりと自分のスイングで振りきれないと、間違いなく、ヒットは打てない。いくら三振の少ないバッターとはいえ、内野を抜けるような球足の速い打球が打てないのであれば、レギュラーは難しい。
早すぎてもダメ、遅すぎても駄目、一番良いタイミングで打つための“準備”ができるように意識付けすることができるのが、この『シンクロ打法』の本当の良い点だと私は解釈している。
徒競走のスタートで、スターターがピストルを打つ瞬間(=ランナーがスタートする時)がバッティングにおける“ミートの瞬間”だとすれば、スターターが「用意…」と言いながらピストルを構える時=ランナーが一斉に腰を上げるタイミングが、バッターがピッチャーのモーションに合わせて打つ用意をし始める時だろう。
この時、「用意…」とピストルを上げ始めた瞬間に「バン!」なんて打たれてしまったら、ランナーは全員出遅れてしまうだろう。しかし、逆にピストルを構えた時から引き金を引くまで、1分近くも待たされたらランナーはどうなるか。
みな、つんのめってしまってフライングの嵐になってしまうだろう。
用意、と言われてから、スタートする準備のためにお尻をくいっと上げ、ちょうど良く“力をためられる間”で引き金が引かれるから、世界記録も出るのである。
打つタイミングが一番重要だろうが、打つタイミングを最適にするためにも、“打つための準備を始めるタイミング”も同じく重要だと思うのである。
手塚一志氏は、その指導解説ビデオの中で、バッティングの最適なタイミングの捕り方を「じゃんけんぽん」に例えている。
これは、数ある野球指導名言の中でも白眉な“例え話”だと思う。
思いっ切りわかりやすい^^;
なぜ、じゃんけんの「じゃん」と言いながら、お互いの拳を一度振り、タイミングを合わせるのか。当然、「け~ん」の次の「ポン!」で、先だし、後だし無いように同時にグーチョキパーのいずれかを出すためだ。でないと、ケンカが始まりかねない。
シンクロ打法において、前足の踵を踏むステップ動作は、じゃんけんにおける、この「じゃん」といいながら一回グーを握ってタイミングを合わせる行為なのだ、というわけである。
う~ん、タイミングの合わせ方について、これほどわかりやすい説明方法が他にあろうか。私は、この一文で「手塚信者」になったと言っても過言ではない^^;
これで、ピッチャーとバッターの「ポン」のタイミングつまりミートの瞬間を合わせやすくなる、という事である。
が、まぁ、プロ野球のレベルになれば、同じポン、のタイミングで腕を振ったとしても、指を開くタイミングをずらして相手のじゃんけんの種類を確認しながらそれに勝てる手を出す、という超絶テクニック(全く同じフォームで投げる、日ハムの武田投手のチェンジアップのように)も出来るのだろう。
だから、バッターは、ピッチャーの重心移動にタイミングを合わせただけで安心してたらとてもヒットは打てないんだろうが、そこはバッターもプロ、ピッチャーがタイミングを外そうとする変化球を迎え撃つため、軸足のタメの取り方、踏み出し足の着地する位置、体重移動が始まってもなんとかトップの位置をこらえて待ち続けるとか、スイングスピードなどで微調節し、限りなくバットの芯でボールを捉える工夫をするわけだ。
でも、アマチュアのレベルであれば、打つための“準備”が上手にできれば、それだけでもかなり打率はUPさせることができるはずである。
だまされたと思って、やってみましょう。
シンクロするタイミングはいろいろあるので、それは自分自身が一番“間(タメ)”を取りやすいものを試行錯誤して探すしかないが、一番多いタイミングがピッチャーが重心を下ろし始める時に、前足の踵を踏む、つまり、自分の重心を下げる、ということだ。
ここで注意しなければならないのが、せっかく重心を下げたのに、ミートするタイミングで、力んでぐおっと伸びあがってしまうことである。真後ろにファールが行く事が多い選手、というのは、きっとタイミングは合っているのだろうが、おそらく目線がぶれているハズだ。
シンクロして、踵を踏んで重心を下げたら、その視線の位置をミートする瞬間まで動かしてはいけないはずだ。そのためには、やはり足腰を鍛えて安定させていないといけないのだろう。
断っておくけど、言われたように本読んでシンクロ試してみたけど打てねー、こんなの嘘だー、なんて「すぐ」決めつけないように。
そんなお気楽魔法の薬の様なテクニックはこの世に存在しない。どんなに有効な技法だとしても、それをモノにする為には、モノにする為の“試行錯誤”、つまり“血ににじむような訓練”が必要なのであるし、「シンクロ打法」なんてネーミングすると何か特別な「超絶テクニック」みたいに思えてしまうが、冷静に考えれば、ただ単に、タイミングを合わせるための“コツ”みたいなもんである、ぐらいに考えて、あらゆる可能性は追求し続けないと、ヒットは続けて打てませんよ、絶対。
なんにせよ、「シンクロ打法」は、私は『準備の大切さ』を教えてくれていると想うのだ。
60歳、70歳、いや、100歳まで健康でいたいと想うのなら、そのための“準備”を若い時からしておく事が大事なのである。健康になりたいと想うなら、早寝早起き、暴飲暴食は慎み、好き嫌いなく出されたモノを食べなければならない。そういう“基本”をないがしろにして、いくらサプリメントを摂取しても、病院から出される薬をこれでもかと飲んでみても、かえってどんどん不健康になっていくだけである。ダヨナァ…(-_-;)ゞ
ところで、ウチの次男と三男は野球をしているが、現在中3の次男は中学野球現役時代はエースを任されながら5番バッター、打率もおよそチームで3位から下に落ちた事は無いらしい。
三男は、学童野球部時代は、チーム最上級生になってからは、チーム内首位打者でいた時期は一番長かったし、現在所属している6年生だけで構成する「連合チーム」では、打率は常に4割以上をキープし、チーム内首位打者から一度も落ちた事はありませんぞ。
「シンクロ打法」が全てではなかろうが、タイミングの取り方として、打率UPに貢献してくれているテクニックなのは間違いない。
ちなみに学童野球の指導者時代、7番バッターだったキャッチャーの子に、このシンクロ打法を伝授したところ、わずか2カ月後の大会から、4番バッターに抜擢された、という経験があります。
これには、私もビックリしました。
…そのおかげで、ウチの息子は5番打者だったけど…ね(-_-;)ゞ
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