ショルダーズ・バイブル [インナーマッスルトレーニング・本]
野球少年の息子の肘痛をなんとかしたいと情報を集めまくっていた時、出会ったのがこの本。
一時期、まさしく私の「バイブル」的存在でありました。
前回の記事、『ミズノ エアーフリッパー』の中でも紹介させていただきました。
いきなり、話題は変わりますが、なぜ、野球をすると、肘を痛める少年が多いのか?
肘を痛める原因を探しているうちに、その肘がついている腕の“土台”である、肩の安定の重要性に気づいたのである。
その訳は…
と~にかく、いろいろな“野球理論”が横行しているが、私も競技野球の経験は無いので、自分が考えている事に、「経験則」の裏付けができないのがなによりもどかしい。
が、二人の息子が野球部に所属し、指導方法をいろいろと調べているうちに、「指導方法上の経験則」だけはおそらく人二倍ぐらいに積み重ねることができたとは想っている。
“机上の空論”でも、つきつめれば、かなり核心に迫れるのではなかろうか。その、“つきつめた机上の空論”の中でも、「障害予防」については私はかなりのレベルまで達しているハズだと自画自賛している。
野球障害の中でも、“経験させられる”時期が多分最も“早く”、回数も最も“多い”と思われる、いわゆる【野球肘】という障害。
この野球肘という障害が、野球というスポーツにおいて、一流選手になれるかどうかの試練として、まず最初にかけられる「フルイ」なのではないか。
野球選手として、初心者の集団から、ひとつ階段を登って上のレベルの集団の中に入る事が出来るかどうかの最初の「ふるい」
私の考えでは、それが、「肘を痛めるか、痛めないか、もしくは“再発させない”か」だと思うのである。
まぁ中には一番最初に腰を痛めたり、膝を痛めたりする子もいるが、それはあくまで野球に限らずどんなスポーツをしていても痛めていたはずの障害だと思う。
野球というスポーツでまず最初に遭遇するのが、「肘の痛み」であるはずだ。
それでは、肘の痛みはなぜ起こるのか?
良く、指導の中で使われる表現の中に
「肘を下げるな」
というものがあると思う。
やはり、肘を痛める第一の原因は、スローイング時に、肘が下がっている、というものがあるだろう。
では、なぜ肘が下がると悪いんだろう、か?
学童野球の指導者だった頃、子供達に、肘が下がるとなぜ悪いのかを実感させるために、ボールを持たせ、ちょうど、ボールをリリースする直前の状態のフォームをとらせる。
その時に両肩を結んだ線より肘が下にあるようにして、背中の方からボールをもった手の先を後ろに引っ張ってくるのである。
そうすると、引っ張ってきた手がちょうど身体の真横にくる前にもう、肩の付け根、肘の内側が引っ張られた力によって痛み始め、それ以上は子供達がギブアップするはずである(肩関節の異常に柔らかい子もたまにはいるが…^^;) 正面から観ると、子供の腕は、手首と肩関節を頂点、肘の位置が谷の底の位置のV字型になっているだろう。
その位置では、例えばトレーニング用のチューブなんかも、肘の内側肩の付け根にだけ強烈なストレスがかかり、強力に引っ張ったりできないだろう。
しかし、サッカーのスローイング時、投げる直前に頭の後ろにボールを保持している様な腕の位置、つまり、耳の高さぐらいまで肘を上げた状態でチューブを引っ張る時は、腹筋や背筋まで上半身全体にまでストレスが分散し、肘・肩の関節部分に集中的にストレスがかかっているような状態にはならないはずだ。
このような感覚を子供達に掴ませながら、だから「肘を上げないといけないんだよ」とは教えてみるものの、やはり子供、いくらそう説明したところですぐに治るものではない。
ので、肘を上げざるを得ないトレーニング、というものを施していかねばならないのであるが、今現在、私が一番有効だろうと思っているトレーニングは「真下投げ」である。
これは、ボールを自分の体の前の地面にたたきつけるだけのトレーニングなのであるが、これがまた本当に有効なのである。
「真下投げ」については別記事で紹介していきます。
私は、「真下投げ」のような直截的なトレーニング以前に、まずは「肘を下げさせないための体力」を調整してあげておかないといけないのではないか、と想うのです。
肩のコンディショニングが改善されていないと、肘の高さを維持できず、いくら肘を上げるようなトレーニングをしてもすぐに元に戻ってしまうような気がする。
息子が高校球児になってから、「レギュラーになれ!甲子園を目指せ!」とはっぱかける前に、幼少の頃から“基礎体力”をつけるための外遊び、“運動神経”を良くするコーディネーショントレーニングなどをたっぷりやらせてあげて、競技野球に参加した時、上達のスピードが早くなれるよう、“インフラ整備”をしてあげておくべきだ、と、私は考える。
同じように、指導者ならば、肘を上げろ上げろという前に、「肘を上げて投げられる身体」を与えてあげなければいけないと思うのだ。
ちゃんと、肘を上げて投げられる子は投げられる。それを“生まれつき”、もしくは“素質”という言葉で片付け、出来ない子は「センスが無いんだよ」なんて切り捨てるようでは、“監督、コーチ”なんて肩書をつけられて「指導者」と呼ばれても、「惨め」になるだけではないか。
注意するだけで癖が治れば誰も苦労はしないのである。注意しつつ、“無意識に”合理的な身体の使い方ができるようになるトレーニングも同時に提案できて、「“良い”指導者」と呼ばれるようになるのだ。
肘を上げて投げる、ためには、ボールリリースの瞬間は、肩甲骨の関節窩(ソケット)と、上腕骨の身体よりの骨頭(ボール)の“接点”が、肩の「0(ゼロ)ポジション」と呼ばれるポイントになければいけない、とこの「ショルダーズ・バイブル」という本は教えてくれる。
詳しくはこの本を読んでいただくのが一番良いと思うのだが、一応、自分なりに解釈した事を述べてみる。
ボール&ソケット構造、というらしいが、肩関節というものは、ただ曲げるだけでなく、前にも後ろにも上にも外旋したり内旋したり(つまり、捻るような動き)できるように、沢山の筋肉が付着している(身体の中では、もう一か所、“股関節”がある)。
関節の先の骨の角度を自由自在に動かすために張り巡らされた微小な筋肉群。それが、いわゆるインナーマッスルでありましょう。
肩甲骨と、上腕骨を繋いでいる筋肉群(インナーマッスル)が、全て偏りなく均等に位置していられるポジションが「0(ゼロ)ポジション」であり、そこの一か所を使って投げていると、肩は故障せず、位置的に当然肘も高い位置にあるわけで、肘にもストレスがかからなくなるのだろう、と私は理解した。
正確にはレントゲンで撮影でもしないと「0ポジション」はわからないんだろうけど、この本の中では、勝負に勝った時に自然と出る“ガッツポーズ”の位置だ、と教えてくれている。
…なるほど。この場合のガッツポーズは、もちろん、胸の前で小さくやるようなものでは無くて、肘がおよそ耳の横当たりの高さに来るような位置でやる、普通のガッツポーズ、であります。
だいたいこの当たりでボールをリリースできれば、肩・肘を故障する確率は限りなく小さくできるのだろう、と私は理解しております。
この「ショルダーズバイブル」という本は、「0ポジション」を維持するために必要なインナーマッスルと、その鍛え方を非常にわかりやすい例えで教えてくれます。
この本の中で、スローイングにおいて重要なインナーマッスルは、「棘下筋(きょっかきん)」「肩甲下筋(けんこうかきん)」「棘上筋(きょくじょうきん)」で、これらは上腕骨についている筋肉で、別名「ローテーターカフ」とも呼ばれており、野球のスローイングにおいて最も重要なインナーマッスルと位置付けられている(ローテーターカフには、もうひとつ「小円筋」というのがある)。その他に、「前鋸筋(ぜんきょきん)」「菱形筋(りょうけいきん)」という、肩甲骨の動きに関係してくるもの、そして「上腕二頭筋」(これはインナーマッスルではないが、肘関節にかかる負荷軽減のために非常に重要)の合計6つの筋肉を「調整」するのが大事だと言っている。
ここで私が一番大事だと思ったのが、筋肉とはいえ、「鍛える」という表現は使わずに、「調整する」というイメージを持つことだ、という説明である。
微小な筋肉群なので、「鍛える」というイメージでトレーニングに臨むと、ついつい負荷をかけ過ぎ、インナーマッスルではなくて、アウターマッスル(大胸筋とか、三角筋とか)を鍛えてしまう、と解説されていたが、これは私にとっては「目からウロコ」な注意点であった。
どうしてもついつい強い負荷をかければかけるほど効果が高いような気がしてしまうのだが、投球障害を予防する意味でのトレーニングにおいては、あくまで「調整する」というイメージを持ちながらやることが非常に大事だと思うのである。
具体的なトレーニング方法も満載で、全て実践するのが難しいほど。でも、ゴムチューブを使ったり、ダンベルを使ったり、水の中(プールとか)でのトレーニングなどなど、いろいろなシュチュエイションで、どれかはできそうなメニューが紹介されております。
また、今をときめく広島カープの前田健投手が行っている、「マエケン体操(上体を前傾させ、肩をグルグル回すような動き)」の原型ではないか?と思えるようなトレーニングも紹介されてますぞ。
初版は1995年であるが、私にとっては未だに重要な愛読書である。読み直すたびに、「おぅ、そうそう、そうだった」と、気付かせてくれるポイントが満載である。
お子さんが、野球肘、野球肩などの、投球動作の障害でお悩みの方、なぜそういう障害が発生してしまうのかを理解するためにも、非常に役立ちます。
ビデオ版もあります。そのうちにこちらも紹介します。
ビデオの方は画像が出ないのが残念ですが、こちらも絶対に損はしない内容でした。
お勧めです。
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