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“腿上げ走”はしてはいけない? [走]

 私は、高校生時代に陸上部だったもので、「走る」ということに関しては一家言持っているつもりである。

 長男、次男ともに脚は遅かったが、三男は今所属している、学童野球を卒業した小学6年生だけで構成する連合チームの野球部でダイヤモンド一周タイムは二番目(11人中)の速さである。

 しかし、三男も最初は全然早くなかった。学童野球部に同級生が6人いたが、最初の頃は5番目、つまり6人中、ビリから2番目の順位だった。

 それが、ダイヤモンド一周タイムアタックでチーム最速タイムをたたき出し、卒団の頃は、私がコーチをし始めてから取り続けている7年間、延べ30人のタイムの中でも「チーム歴代2位」のコースレコードを樹立することができるようにまでなった。

 低学年の頃は、当時の監督さんにその脚の遅さを嘆かれるほどだったのに、今所属している、6年生だけで構成する連合チームの中でも、チーム監督の息子さんであるキャプテン君に次いで、ダイヤモンド一周タイムは、11人中2位の19.74秒を記録(小6・去年の10月頃の記録)している(塁間は、もう大人と変わらない27.43mになっている)。

 これは、ひとえに「ポンピュンラン」のおかげである、と断言する^^;

足が速くなる「ポンピュン走法」DVDブック(DVD付き)

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  • 作者: 川本和久
  • 出版社/メーカー: マキノ出版
  • 発売日: 2010/04/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 日本記録保持者を輩出する、福島大学陸上部の監督である、川本和久氏が提唱する、脚を速くするための画期的走法である。

 なんか、一昔前のブルワーカーの宣伝文句みたいになってしまったが、事実だと確信するので、認めざるを得ない。

 それでは、なぜ、脚が早くなるのか? その訳は…

 

 

 

 陸上部に所属していた高校生の頃。

 足が遅く、長距離も苦手の私は(なんでそんな奴が陸上部なんだと笑われそうだが、中学時代やっていたバドミントンを高校でもやろうと想ったらば、バドミントン部が無かった高校で(-_-;)ゞ 、たまたま同じ中学校から入学して、陸上部に入ろうとしていた同級生に一緒にどうかと誘われたわけ)、最終的には投擲選手に回され、円盤投げとやり投げをやらされていたのだが、それでも短距離も毎日走らせられていた。ダッシュトレーニングは、投擲種目に必要な瞬発力を高めるのにも最適なエクササイズになるからだ。

 しかし、100メートルぐらいまでならまぁ意味が分かるが、投擲種目の選手に400メートルは必要ないんじゃなかったのか、と今でも先輩の「指示」には非常な疑問を持っている(-_-メ)

 走ったあとに苦しさの余り、胃の内容物をもどしてしまうのは、決まって400メートル走の時だけであった。

 400メートル、という距離は、やった人なら分かると想う(逆に言うと、真剣にやった人ではないと、本当の辛さはわからないと想う)が、人間にとって、一番過酷な種目であるはずだ。

 そら、長距離走ももちろんきついんだけど、長距離はある意味「抜ける」瞬間があるのである。が、トラック一周の全力疾走は、“(力を)抜けるタイミング”が全くないのだ。

 50秒間近く全力疾走を強いられる。人間の平均的な「無酸素運動許容時間」は、40秒前後らしい。となると、「無酸素運動」を限界までさせられた上に、肺活量の限界値で更にパワーを絞り出させられるわけだ。脚の遅い私には、一番きつかった(-_-;)…

 コーナーを回り、最後の直線に入ると、一歩一歩、どんどん自分の言う事を脚が聞いてくれなくなってくる。砂浜を走っている様な、夢の中で全力疾走したいのにもどかしいほど脚が動いてくれなくなるような感覚になる。

 ゴールのラインが、逆に遠ざかっているんじゃないかと錯覚してしまうほど、膝が上がらなくなってくる。膝よ、あがれ、動け、前に出ろ!

 …という、感覚が強烈に残されるので、「腿上げ走」なる“全く無意味”になりかねない練習方法が編み出されてしまったのではなかろうか。

 革新的な「脚の速くなるトレーニング」の提唱者の中に、「腿上げエクササイズ」を推奨する方はまず、いらっしゃらない。

 「速く走る」という意味合いにおいての「腿上げ走」は、そろそろ、私が学生だった頃(かれこれ30年ぐらい前の話になる^^;)の、「運動中は水飲むな」命令と同じように「死語」になりつつあるはずだ。

 膝は、“上げる”のではなく、“前に出す”ものなのだ!

 正直、「ポンピュン走法」を紹介する本の中で、この考え方を書いてある部分を読んで、電撃に打たれたようにショックを受けたのである。

 高校生活の放課後と貴重な土日を陸上部の活動にほぼ費やし、さんざんに「腿上げ走」のトレーニングを積まされてきた私にとって、この考え方は、まさしく「コペルニクス的転回」レベルの“走る時に持っていた、足の動かし方の意識の持ち方”の、大転換であったのだ!!

 そうなのだ、膝は、上に上げるものでは無くて、前に出す、ものなのだ!だって、人は、前に進もうとするのであって、上にジャンプしようとしているわけではないのだ。

 一般の方が、短距離走の選手が走る姿を眺めているだけでは、膝を「上げよう」が、「前に出そう」が、ほとんど変化はわからないだろう。膝を出来るだけ前に出そうとすれば、大腿骨はほぼ地面と平行な位置になるわけで、加速中の前傾姿勢の静止画像で見ればそれはそれは「腿を高く上げて」走っているように見える。しかし、決して、地面と平行のラインよりも「膝を高く上げて」走るランナーはいないはず。それは、“無駄な動作”であるからだ。

 膝は高く上げるものでは無くて、できるだけ前方に出すものである。

 走る人間自身が、どういう“意識”をどう持つか、によって、100m走った先のタイムは、とんでもなく差が出てくるのだ。

 もうひとつ、速く走るために、脚を地面に着地させるときの意識も重要になってくるポイントがあるのだが、それもまた非常に重要なことなので、別記事でひとつのテーマとして展開していくつもりである。

 ではなぜ、膝を上げる、というか、「腿上げ走」がいけないのだろうか。

 意識的に腿を“高く上げ”ようとすると、「骨盤が後傾しやすい」のである。

 「骨盤が後傾しやすい」とはどういう事かというと、簡単に言えば猫背になるんだが、猫背、というイメージよりも、立ち姿の時、腰を落としていこうとして、「シシースクワット」のように膝が前に出てしまう姿勢、といった方が良いかもしれない。

 学童野球で、守備の時、子供達に「もっと腰を落として!」というと、膝を前に出すようにして、猫背のまま腰を前に突き出すようにして下げてしまう子がいる。ちょうど、チン○ンを前に出すような、「立ちション」をするようなポーズだ^^;

 こういうとき、骨盤は、「後傾」している、つまり、後ろに傾いているわけだ。

 これでは、下半身を素早く反応させることは難しいフォームになっているハズ。やってみるとわかるが、腿の前面が緊張し、膝周りから脛の筋肉当たりがガチガチになって、瞬間的に反応する様な動きは取れなくなってしまう。お尻を後ろに突き出すようにしながら腰を落とすような感じにしないと、胸を張ってしっかりと足腰に“ほど良いバランスの緊張感”を保ちながら構えられないハズだ。

 これは、先に「野球選手と筋トレ」という記事の中で紹介した初動負荷理論を説明する本の中で、著者の小山裕史氏が言及していらっしゃるのだが、何も注意せず腿上げを子供達にやらせると、確かにみな一様にアゴを突き出し、背中を丸め“膝を自分の胸につけるような”イメージでやってしまう。真横から腰をみているとわかるが、骨盤が立っておらず、後ろ側に傾いている状態になっている。

 いじわるでその場でそのまま延々やらせ続けていると、大抵の子が徐々に後ろの方へ下がってしまいがちになるだろう。

 ということは、腿上げ走では、前方への推進力が生まれていない、ということではなかろうか。

 どうしても「腿上げ走」をやらせたいのであれば、必ず、背筋をピン、と伸ばしながらやるようにさせないと逆効果であるハズ。そして、無理に膝を胸まで付けさせるような意識は捨てさせるべきだ。

 つまりは、「腿上げ走」というトレーニングは、難しいのだ。

 専門的な指導者のもと、専門的にトレーニングに取り組む選手でないと、効果的なエクササイズにはならない、というのが、今のところの私の結論。

 やるんだったら、せめて、脚を下ろす場所を、自分の胴体の真下では無く、脚を上げて膝が90度の角度に曲がっている時の、「足裏の真下」に足を降ろすようにさせるべきだ。

 当然、大腿骨分の長さだけ身体が前方へ進み続けることになるが、そのまま加速走に入るようにすれば、これは逆にそのまま「ポンピュン走法」の練習になっていくのだ。ポンピュン走法では、「空き缶踏みつぶし」というトレーニングになるわけだが、そういう「腿上げ走」なら、大いにやらせるべきかもしれません。 

 私が走る時に持つイメージは、腰に巻いたベルトのバックル当たりを、誰かに掴まれて思いっ切り引っ張られている様な感じである。そうすると、自然と骨盤が立つ、というか、前傾し、胸を張った感じ、背骨がピンとして走れるように想っている。

 ただこれも、意識させ過ぎると、上体が後ろにそっくりかえっちゃうような、“イナバウアー走り”になる子も出てくるから、けっこう、難しい。このやり方、というかイメージも、背筋をピン!とさせながら身体を垂直軸よりもできるだけ前傾させる、という“意識の持ち方”が大事でありましょう。しつこいようだが、“前傾”させる、ということは、“前かがみになる”つまり、猫背になる、いかり肩になる、胸がすぼまるような意味ではないので、子供のフォームはよくよく見てあげないといけません。

 “軸”をしっかりと“真っ直ぐ”保ったまま、前傾姿勢がとれれば、その前傾分つまり重心が前にある分だけ加速力が着くはずであります(もちろん、前傾させ過ぎると逆効果、極端にやれば、それこそ「腿上げ」が間に合わず、足の動きが追いつけずにこけちゃいますが)

  もうひとつ、スタートダッシュの時、一番やってはいけないことは、先程もちょっと、別記事でひとつのテーマとして扱いたいと書いたけど、それは何かというと「地面を蹴る」という意識のことだ。

 これをやると、後ろ側に脚力のエネルギーが逃げ過ぎ、その分、一歩どころか、二歩分ぐらいスタートが遅れてしまうはずだ。

 野球においては、盗塁の場面でこの弊害がもろに出やすい。地面を蹴ろうとすると、ファーストベース寄りの脚が、ふんばろうとして更にずるっとファースト寄りに近付き、なおかつ上体がおっ立ってしまって前傾姿勢が保てず、加速力が弱くなってしまうはずだ。これでは、おそらく“二歩分”損をしている勘定になってしまうだろう。

 大事なのは、「重心を進みたい方向へ素早く移す」ことなのだ。つまり、“身体を移動させること”が重要なのであって、“脚で地面を強く蹴る”事が重要なのではない。

 腿上げ走をしながらダッシュをさせるとそれが良く分かる。その場で腿上げをさせながら、突然「ゴーっ!」と掛け声をかけてスタートさせると、ほとんどの子がその場で脚を上下させていた位置よりも身体の後方に一度足底をついて、一歩引き下がったようなかっこから走りだそうとするはずだ。

 “スタートを感じよう”とする時は、その方が「スタートダッシュに力を込められたような気がする」のであるが、重心を前に移動させ、徐々に加速して行くスタートの方が、実は身体は速く前方へ移動出来ているハズだ。何も指導しない子と、「後ろに足を引かないで、重心を前に移動させながらスタートしなさい」と指示した子では、明らかに後者の方が最初の2,3歩は先を行っている。その後は個人の足の速さがあるからゴール地点では順位に当然ばらつきは出るが、スタート時だけに限れば、「重心を前に移動させる」というイメージを持たした方が「速い」はずなのだ。もし、全く同じ足の速さの選手が二人いるとすれば、そのスタートの差分が、そのままゴール地点での到着距離の差となるはずだ。

 ただ、スタートした直後の加速期にある時と、巡航スピードに入った時ではまた感覚が変わってくるのでこれも難しい。

 スターティングブロックを使用してのスタート直後、身体が最も前傾しているフォームの間は、今まで通りの脚上げ走のイメージでもしっかりと加速してくれるはずだが、加速が終わり、トップスピード近くなってからの走り方は、スタートと直後と同じ「腿上げ走」ではいけないのでありましょう。

 というか、スターティングブロックを使ってのスタートのせいで、「腿上げ」と「後ろに蹴る」というイメージが定着しちゃったんじゃなかろうかいな?

 あくまで、あれは、スタートの“ほんの一瞬”だけの話であるのだ。

 おそらく、「加速走を“永遠に”続けられればスピードは上がり続ける」という『妄想』を持ってしまったがために、スタートダッシュが終わったあとでも「腿上げ走」をやらせようとしてしまったのだ。

 とにかくまず第一に持たなければいけない意識は、「膝」は「上げる」ものではなくて、「前に出す」ものだ、というところでありましょう。

 その感覚の練習方法としては、例えば盗塁をさせる時のリードした姿勢をとらせて、右足の膝を背中側から手で抑えてやり、その手のひらを「押す」ようにスタートを切らせるのです。

 それで、「体重移動」の感覚がつかめたようなら、今度は前面に座り、ちょうど、盗塁する姿勢から一歩左脚を踏み出し脚をつこうとする位置の膝の高さあたりに手のひらを置いておき、「この手のひらを膝蹴りするようにしてスタートしなさい」というトレーニングをやらせた。

 これで、ウチの三男は「膝を前に出す」という感覚を養えたと想う。しつこいようだが、ここで絶対に注意しないといけないことは、キックボクシングの飛び膝蹴りのように膝だけ前に出して上体が後方にそっくり返るような姿勢にならないようにすることである。こうなると、次の膝出しが絶対うまくいかなくなり、「次々と」膝蹴りするように走るわけにはいかなくなる筈だ。

 常に「前傾姿勢」を意識させつつ、「“次々”と、膝蹴り走」をやらせるべきだ。ウチの三男は、上体を浮かすことの無いように注意しながら「次々と膝蹴りするように走れ!」という指示を出すようになってから、まさしく『劇的』にタイムが向上し始めたのでございます。

 それでは次回は、もうひとつの大転換した意識、“地面を後ろに蹴る”のではなくて、“脚は真下に強く叩きつけるように降ろす”という考え方を検証しながら、私が推奨するポンピュンランのご紹介をしていきたいと想っております。


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