素振り [打撃論]
野球選手で、やらない人は絶対いないと断言できるであろう、【素振り】
だが、何のためにやるものなのか?
やっている本人が、一度は、「何のために“素ぶり”をやるのか?」と、真剣に突き詰めて考え、とことん検討してから行った方が、効果が変わってくるのではなかろうか。
なんでこんなこと考えたかというと、どうにも、“惰性”でやっているとしか想えない子供が多いと感じるからだ。
その訳は…?
別に、新しいバットを買ってやったからって、素振りをしろと言っているわけではない。バットが新しかろうが古かろうが、ヒットを打つためには、“素振り”という練習は欠かせない(まー内心、おニューバットなんだから、もっと喜々として素振りに励め!という気持ちが無きにしも非ず、だが…)
現在、コーチを任されているチームの子供たちにも、「おまえら、“素振り”真面目にやってるのかぁ?!」と聞けば
「はい、一日、百回、やってますぅ~っ!」と答える。
しかし、打撃成績を出せば、打率2割前後あたりを出たり引っ込んだり。
打率2割、と言えば、5打席に1本、である。義務教育期間中のアマチュア野球としては、練習試合も含めた打率としては非常に低い、と言わざるを得ない。
正直、“毎日” “きちんと” “しっかりとした” 素振りを『百回』もやっていたとしたら、アマチュア野球で打率2割、というような低打率は「ありえない」数字ではなかろうか。
どう感じられるかな、全国の指導者の皆さん。おおよその方には、「ウンウン」と頷いていただいたはず。
おそらく、この選手達は、「ちゃんとした素振り」をしていないハズだ。
ただ、バットを“動かして”いるだけなのだ。「素振り」ではないのである。
では、どのように素振りをすれば、「良い素振り」「効果のある素振り」となるのだろう。
そら、「気が入っていないから結果につながらないんだよ!真剣にやれ!」というのは簡単だが、本人としては、嫌々ながらもとりあえずは怒られないように、ヒットが打てますようにと必死に振ってはいるはずだ。
しかし効果が出ない、というのは、しっかりと振ってないとか、根性が入ってない、という考え方よりも、このままではだめなんだ、工夫を加えないといけない、なにかやり方を変えていかないと何も変わらない、と考えさせなければいけない。
子供達にうまいアドバイスが見つけられないで悶々としていた時に、たまたま元楽天監督の野村克也氏の講演を聞きに行く機会に恵まれ、そこで「眼からウロコ」なアドバイスをいただけたのである。
「素振りでは、数を数えてはいけない」
という、アドバイスである。
えっ、どういうことだ? 数を数えるなって? ?
とびっくりしたのだが、野村氏曰く、数を数えると、惰性になってしまい、ただ数を重ねることで満足してしまいがちだが、それは、「質より量」な練習であって、時間の無駄である、という。
野村氏は、数を数えるより、バットの風切り音を聴け、とおっしゃるのである。
なるほど、そうか!
いくら100回バットを振っても、スイングスピードを意識しなければ、バットスイングは改善されない。例えば、短距離の100メートルのタイムUPを目指しているのに、練習でジョギングばっかりしていたら、100メートルのスピードはあがらないでしょう、という事だ。
いくら100メートルを毎日100本走ったとしても、スタートからゴールまでのスピードが25秒かかるぐらいの、ジョギング並みのスピードだけでやっていたとしたらタイムを短縮できるような脚力はつかないハズだ。
それぐらいの時間をかけるぐらいなら、毎日たった3本でもいいから、これ以上は速く走れない、という“限界”スピードで真剣にしっかりと走った方が、間違いなく記録更新できる可能性が増える、と誰でも感じるだろう。そして、桑田真澄氏ではないが、余った時間は、休憩なり、読書時間にあてるなりすれば良いのだ。
なのに、自分が素振りしている時は、なぜか100本の“ジョギング走”をやってしまっているのである。
毎日100本の素振りをしています、というのに打率が2割前後を低迷している、という選手は、まちがいなく「ジョギング素振り」になっているはずだ。打率1割も打てないようでは、「毎日100本素振り宣言」は全くの嘘で、普段の練習以外ではバットに触れさえしていないハズである。
野村克也氏は、「バットの風切り音を聴け、それも、ビュ~ン、ではなくて、“ビュッ!”、…でもなく、『ブッっ!!』という音が出るように振りなさい」とおっしゃるのである!
あぁ、そうか、そうだ! これが、素振りと言う練習における、最大のポイントなのだ! と、私は電撃に打たれたように気付いてしまったのである。
まぁ、単純に、「スイングスピード」を意識しながらやりなさいよ、という事だから、最初は当然意識していたハズなんだが、いつも繰り返していると、そういう大事なことをついつい忘れてしまいがちなのである。
それ以来、チームの子供達にも言ってきたが、息子たちにも徹底して「どんな風切り音がするか?」にこだわらせてやらせている。
次男は中学野球でチーム内の打率は、背番号1を背負いながらもいつも上位から3位以内だったし、三男は6年生の連合チームでほとんど首位打者を誇っております。
…あんまし、“自主的”には、素振りしないんだけど…ねぇ。もう少し、【自主的に真剣に】やれば、もっと良くなるだろうになぁ。ホントに。もう。なんでもっと“欲”を出さないんだろう。
オヤジガウルサスギルノカ?…(-_-;)ゞ
ところで、「素振りは大事大事」という指導書や指導ビデオは多いのであるが、それでは、具体的にどのようにして、どんなふうに、どのようなことを意識してやるべきか、まで細かく解説してあるモノは、ほとんど皆無である。
そのなかで、非常に説得力があったのが、慶大監督の元プロ野球選手江藤省三氏の「素振り理論」である。
ベースボールマガジン社の「ベースボールクリニック」という雑誌の2011年2月号に、「打力アップ3ヶ月集中講座」という特集の中で、素振りについてかなり詳しく紹介されていた。
Baseball Clinic (ベースボール・クリニック) 2011年 02月号 [雑誌]
- 作者:
- 出版社/メーカー: ベースボール・マガジン社
- 発売日: 2011/01/17
- メディア: 雑誌
江藤省三監督は、母校・慶大の監督就任一年目の春のリーグ戦でチームを優勝させているが、その要因として、打撃力が格段に上がった事があげられている。他のチームの評価では「慶大の選手は少し形を崩されても、泳がされたり、弱いスイングになる選手が少ない」というものが多かったそうである。
江藤氏は、その理由を「素振り」のおかげだ、と断言する。
「打撃の練習方法には、非常に様々なものがあります。その中で、私が最も重視しているのは、基本中の基本とも言える“素振り”です。」
という出だしから、記事は始まる。素振りに対する、非常に深い理論があるので、そのまま抜粋してみます。
『 素振りは、地味な練習なので飽きやすいうえに、球を打つ感覚がないため、選手としては不安を抱くかもしれません。
実際、私が昨秋のリーグ戦期間中に打線の調子を取り戻させようとして、「フリー打撃をせず、とにかく素振りを行う」という練習を1週間続けた時には、選手達から「前から来た球も打ちたい」という声が聞こえました。
ただ、打力アップを実現するためには、やはりスイング動作の基本を身に付け、打撃フォームを固めていくことが大事になります。
打撃というのは、練習しているものをいかに実戦で出せるかが問われます。
本来は良いスイングができるのにもかかわらず、試合では少し形を崩された結果、弱いスイングになってしまうという選手は非常に多いでしょう。
しかし、素振りで体の回転軸やバットの軌道を安定させ、ヘッドスピードを上げることができれば、バットの芯に当たった場合には打球が遠くへ飛び、たとえ振り遅れて詰まった打球になっても、バットを振り切ることで内野手の頭を越えた安打になる確率が高まります。
また、形を崩されたときの粘り強さも生まれる。
ですから、最初から「もっと球を引き付けろ」とか、「このポイントで打ちなさい」と指導するのではなく、まずは素振りで強く振れるようにすることが大事なのです。 』
うぅ~ん、深いですなぁ。
慶大では、1スイングにつき7秒の間隔を空け、1日1000スイング、約2時間(!)続けて行っているそうだ。なぜ7秒かというと、時間が長いと無駄な思考が入って集中力が途切れ、短いと逆にスイングが雑になりやすいから、だそうだ。
そして、フリーバッティングなどでは、その「素振りの感覚」で、実際のボールを打つ時も同じスイングができるかどうか、が大事だそうである。なるほど。
と、いうことで、息子達には「素振りせい、素振りせい!」と常々口を酸っぱくして指導しているんだが、でもなかなか、自主性に任せておくと、惰性でダラダラジョギング素振りをやってるんだよなぁ。ヘタすると、やったやったといいながら、素振りサボってる時もあるようだしなぁ(^_^;)ゞ
まぁ、結果にすぐに“反映”されてくるから、“真剣”にやってるかどうかは、わかっちゃうんだけどね…
素振りと同じく、健康のため、メタボ解消のためにやる筋トレも、使っている筋肉を意識しながらやるのと、ただ漠然とテレビを見ながらやるのでは、効果が変わってくるという。
何事も、意識を集中してやることが大事なのでしょう。
しかし、“ジョギング”が良い場合もある。私なども、この歳(48歳)になると、急なダッシュや無理なウェイトトレーニングは心臓や血管系、関節などにもかなりの負担になり、“危険”なケースもあるらしい^^;
“健康のため”に素振りするなら、競技野球で活躍しようというわけではないのならば、「ダラダラ素振り」も、けっこうな運動になるんですよね~。
私も、たまに練習でノックもしなければならないので、ノックに使うバットで、雨雪の日以外は、毎日50本前後の素振りはかかさずやっておりますぞ。私は右利きの右打ちですが、最後は必ず左打ちでも素振りして背骨のゆがみ矯正にも役立てております。
…でも、素振りでは体重は減らないようでございますなぁ。
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